PrEP(プレップ)を始めるかどうか迷っているあなたへ ーよりよい自己決定をするために読んで欲しい記事ー

目次
なぜあなたはこの記事にたどり着いたのだろうか?
世界で広まる新しいHIV感染予防法「PrEP(プレップ)」(※PrEPに関する詳細はこちら→PrEP(暴露前予防内服)ってなに?)。
PrEP(プレップ)を実際に試してみたいと強く思っている人、知人が使用していてなんとなくやってみたい人、HIV感染に怯えた過去がある人…さまざまな考えが、あなたをここにたどり着かせたのだと思う。
ただ、多くの人はPrEP(プレップ)が自分にほんとうに必要なのだろうか?と迷いや疑いをもっているのではないだろうか。
この記事は、自分の中にあるそうした迷いや疑いが明確になり、PrEP(プレップ)をするかどうかについて、あなたが納得感をもって選択をする材料を提供することを目的としている。
なぜ納得感をもつことの重要性を強調するかというと、納得感のない選択は一時的なものとなり、長期的には無駄な選択になりうるからだ。
何かの選択をする時には、その選択肢に向き合い、自分の中で意味づけを明確にすることが有効である。
心理学の世界では、自らの意思に基づいて行為を選択することを「自己決定」というが、「なんとなく」や「誰かがやっているから」ではなく、自ら意味づけをし選択することは、自己決定感を高め、精神的な健康やパフォーマンスを向上させると言われている(自己決定理論についてご興味のある人はこちら*1)。
それでは、いつくかのポイントについて考えてみたい。
HIV/AIDSの現状をどう捉えるか
PrEP(プレップ)は、HIV感染を予防する新しい予防法であるが、HIV/AIDSの最新の動向はどうなっているのだろうか。
エイズ動向委員会によると*2 、2019 年に報告された HIV 感染者は 903 件、AIDS 患者は 333 件であり、HIV 感染者と AIDS 患者を合わせた新規報告数は 1,236 件であり、 2013 年の1,590件をピークとし、ともに減少傾向であると報告されている。
また、性別では男性が HIV 感染者と AIDS 患者を合わせた新規報告の 95.1%を占め、感染経路については、HIV感染者の 72.1%、AIDS 患者の 54.1%が同性間性的接触と報告されている。
2013年をピークに現状傾向であるとはいえ、HIV 感染者と AIDS 患者を合わせた新規報告数は 1,000件以上であるという事実からは、高い水準がキープされていると言えるのではないだろうか。

(出所:令和元(2019)年エイズ発生動向 – 概 要 –厚生労働省エイズ動向委員会)
性交渉の場に何を求めたいのか
PrEP(プレップ)に興味をもった全ての人に共通する思いは「HIV感染症を防ぎたい」というものだろう。つまり「安全な性交渉がしたい」という動機が存在していると考えられる。
性交渉の場では、生物学的な快感に加え、緊張緩和やストレス発散などの精神的な効果が得られることが知られているが、性感染症のリスクを伴うハイリスクな性行動は、それらの効果を減少させる可能性がある。
ハイリスクな性行動による弊害は、性交渉の場面だけではない。
性交渉が終わった後も、不安や後悔といったネガティブな感情や考えが心や頭を支配することになり、ストレスが積み重なっていく。
さらに、それらから逃れようと、飲酒をしたり、再びハイリスクセックスをしたりと負の連鎖が続いていく。
そうした負の連鎖につながる行動を選択することは、あなたが望んでいることなのだろうか?
一方で、HIV感染症を予防し性交渉をしていれば、安心して性交渉のポジティブな効果を享受できるから、ストレスを溜めず、ヘルシーな生活を送ることができるのではないかと思う。
性交渉という究極のコミュニケーションの場において、リスクと不安を求めるのか、安全と安心を求めるかは選択次第である。
自分を守る行動をとり、自分の人生をどうしたいか

HIV感染症を予防するための行動が取れるということは、自分にとってどのような意味があるのだろうか。
感染から自分を守るために予防策を講じられることと、そうした策を講じず、感染のリスクに身を晒すことの間には自分の人生に対する態度が異なるように見える。
前者は、自身の人生に対するオーナーシップをもつこと、自分で自分を大事にできる自分に近づくことであり、後者はどこか他人任せで、リスクに対して無防備で、人生がどうなるかは賭けであるように思う。
自分が人生にどのような態度でいたいかは人それぞれだ。
自分の身はできるだけ自分で守って、人生を楽しんでいきたいと思うことも一つのあり方であるし、どの程度かわからないリスクなんて小さいことは気にせず、その場を楽しむ人生でありたいと思うのも一つのあり方。
ただ、自分がどうありたいかを自覚することがよりよい人生を歩むために必要なことだと考える。
あなたが心から望んでいるのはどちらだろうか?
先人たちの話に耳を傾けてみよう
自分の選択に迷いがある時には、自分がまだしていない行動をすでにしている先人たちの話に耳を傾けることが参考になると思う。
UNAIDS(HIV/ エイズ感染に対して包括的かつ調整の取れたグローバルな行動を進める国連の機関)の2019年9月に公開したHIVの予防薬PrEPについての啓発動画では、ロンドンを拠点に活動するMSM4人がPrEPについて語っている。
また、イギリスのPrEPに関するPrEP使用者のドキュメンタリー映像「PrEP17 – The coming of age of PrEP」も大いに参考になるだろう。
最後に伝えておきたいこと
最初にも伝えていることだが、この記事の目的は、PrEPの使用についてあなたがよりよい自己決定をするために自分の考えを明確にする材料を提供することだ。
ここまで読み進めて、あなたの考えにどんな変化があっただろうか?
自分の考えについて明確になったところ、まだ曖昧なところが出てきているのではないかと思うが、まだ曖昧なところがある人は、そこを明確にするためにさらに情報収集をすることも有効だと思う。
PrEPそのものについて理解を深めたくなった人は、こちらの記事参考にしていただきたい。
いずれにしても、この記事を読んだ人が、納得感のいく選択と行動をすることを心から願っている。
参考資料・エビデンス
*1. 自己決定理論とは? 3つの軸と5段階のプロセスを理解して、内発的動機づけを促そう
https://learn-tern.com/self-determination-theory/
*2. 令和元(2019)年エイズ発生動向 – 概 要 –
https://api-net.jfap.or.jp/status/japan/data/2019/nenpo/r01gaiyo.pdf