もしもあなたの生活にPrEPがあったら?

2020年7月27日

もしもあなたの生活にPrEPがあったら

多くMSMがPrEPの使用を望んでいる

アメリカ、イギリス、カナダなど、世界中のMSM(男性とセックスする男性)たちの間で日常的に使われつつあるHIVの新予防法PrEP(プレップ)。

日本でも認知度は上がりつつあるが、実際の使用者はまだ少ないのが現状である。

一方で、PrEP in JAPANが約6000人のMSMを対象とし2018年10月〜11月に実施したアンケート調査では、「PrEPの薬が日本で入手可能になったらあなたは使いたいですか?」という質問に対して、7割の人が「使いたい」と回答し、「日本でもPrEPを導入するべきだと思いますか?」に対しては、8割以上が「賛成」と回答している。

多くのMSMがPrEPの使用を望む結果が示されたといえるだろう。

では実際に、PrEPを行いたいと思った場合、どうしたらいいのだろうか。

また、PrEPを使用することで、性生活やメンタルにどのような変化があるのだろうか。

HIV感染に怯えるセックスライフを変えたい

HIV感染に怯えるセックスライフを変えたい

「その場のノリで生でセックスしちゃった・・・」
「見ず知らずの人のHIVをうつされたくない!」
「盛り上がってうっかりコンドームをし忘れてしまった」
「先月、クラミジアになってしまった・・・」

このような思いを抱いた*1 ことはないだろうか。

コンドームを着用しないセックスによるHIV感染やその他の性感染症のリスクは周知の事実であるものの、人はその場の快楽に負けてしまう。

こうした行動により快楽を手にできるが、一方でその快楽が続かないのもまた人である。

快楽が去った時には、「HIVに感染していたらどうしよう」というような不安や恐怖、「またノリでやってしまった。なんてダメな人間なんだ」という罪悪感がどっと心に押し寄せる。

ハイリスクな性行動をとった人は、こうした感情との闘いを経験することになる。

また、自分自身はリスクに対する意識が高くとも、相手が同じとは限らない。

「コンドームをつけて」という一言には勇気がいるだろうし、要望が受け入れられるかどうかも不確実である。予防意識が高い人であっても、不安や恐怖を100%コントロールすることは難しいのが現実だ。

一方で、日頃からコンドームの着用し、PrEP行う習慣のある人はこうした不安や恐怖、罪悪感なく、安心してセックスを楽しむことができる。

HIV感染リスクをコントロールした上で楽しむセックスは、雑念なく集中できるから、得られる快楽もまた一味違うのではないだろうか。

HIV感染リスクをコントロールした楽しむセックス

あるPrEPの使用者は、インタビュー*2で「PrEPをはじめてから最初の1ヶ月は、なんというか、無敵の気分でした(笑)」と語っている。

安心してPrEPを行うためには

快適なセックスライフを送るためにPrEPを始めようと思ったら、まず検査に行くことが大切である。

安心してPrEPを行うために

「すでにHIVに感染している可能性はないだろうか?」
「腎機能に異常はないだろうか?」
「B型肝炎に感染している心配はないだろうか?」

自分がPrEP内服に適した状態であるかを知るために、このような項目について医療機関で検査してもらう必要がある。詳しくは「テンビルEMを飲む前に確認すべきこと」に書いたので読んでいただきたい。

初期の検査後も、PrEPの使用を定期的フォローしてくれる医療機関を見つけることが望ましい。
国内には、国立国際医療研究センターに併設されたSH外来*3や、性病を専門とするパーソナルヘルスクリニック*4(オンライン診療も可能)などの医療機関がこの領域に対して専門性を有しているので、より安心してフォローが受けられるだろう。

継続的に利用できる方法で入手したい

いざPrEPを始めようと思った時、その入手方法に悩む人も多い。

日本でも使用者が増えつつあるものの、抗HIV剤であるツルバダ配合錠の予防目的の使用は国内では未承認であり、保険適応外となる。

ツルバダ配合錠では、その薬価は1錠あたり3917.8円と高額であり、薬にかかる費用だけでも1ヶ月あたり12万円弱の出費となる。

この事実を知ると「金持ちしか続けられなさそうだから諦めよう・・・」という思いが湧いてくるのではないだろうか。

現実的に考えて、HIV感染リスクを下げるためだけに年間150-200万円のコストをかける人は多くはない。

しかし、ツルバダ配合錠のジェネリックを安価で購入できることを知ると、PrEPの使用に対して現実味がでてくるかもしれない。

継続的に利用できる入手方法

海外ではテンビルEMというツルバダ配合錠のジェネリック(後発薬)がすでに開発されており、医薬品の個人輸入代行サイトを活用することで海外からジェネリックを通販で購入することが可能である。

PrEPのお薬代比較

(出所:ツルバダ配合錠ジェネリック(テンビルEM)を個人輸入で購入する

先述したアンケート調査では、PrEP使用者の65%が、入手方法はインターネットと回答している。

HIV感染のリスクはセックスをする限り発生し続ける。継続的なPrEP利用を前提とすると、インターネット通販で入手する方法はかなり現実的な選択肢の一つといえるだろう。

PrEPのある生活。忘れずに服用したい

「検査も受けた!手元に薬もある!」
「早く始めたい!」

さて、いよいよPrEPを始める準備ができたところで、次は服用方法を確認したい。

PrEP服用方法

PrEPには主に3種類の服用方法があるが、予防効果がもっとも高いのはデイリーPrEPである。

デイリー PrEPとは、1日1回決まった時間に薬を服用する方法だ。

他にもオンデマンドPrEP、週4回の内服などの方法があるが、服用忘れのリスクを避けるためにもデイリーPrEPが最も推奨されている。

デイリーPrEP・オンデマンドPrEP・週4回

(出所:ツルバダ配合錠ジェネリック(テンビルEM)を個人輸入で購入する

服薬に慣れるまでは、アラームをかけて怠薬を防ぐことが望ましい。

PrEPは、怠薬なく用法用量を守ることで90%以上の予防効果を発揮することが証明されている。

薬は室温での保管が可能なので、管理コストはかからない。旅行に出かける際は、ピルケースに入れて持ち歩くとよいだろう。ツルバダ配合錠の持ち込みが禁止されている国もほとんどない。

「薬を飲む時って、お酒を飲んじゃだめっていわれるけど・・・」

こんな疑問を抱く人もいるだろうが、PrEP中の飲酒は問題ないとされている。アルコールが薬の効果を妨げたという臨床試験結果は発表されていない。

用法用量を守って服薬し始めたら、7日間程度はハイリスクなセックスを避け、安全な性行動をとることが大切である。PrEPがHIVに対して十分な予防効果を発揮するまでには7日程度かかるためだ。

あれ?もしかして副作用が出ているのかもしれない

副作用の可能性

「頭が痛い・・・」
「気持ち悪い・・・」

服薬を始めた後にこんな症状が現れることがあるかもしれない。

ツルバダ配合錠を使用したPrEPの研究における最も一般的な副作用には、頭痛、吐き気、嘔吐、発疹、食欲不振がある。

もしも服用後にこのような症状が出た場合は、すぐに医師に相談することが望ましい。服薬の時間帯を工夫することで副作用の改善を図ることもできるようだ。

PrEP使用後の健康的なセックスライフ

PrEPを服用していると「もしも」を考えなくてもいいから、不安との闘いから解放される。

HIV感染を心配しなくてもいい状態でのセックスは開放感に溢れるものとなるかもしれない。

「セックスの時の不安が消えた」
「ストレスが減った」
「もう服用前に戻りたくない」

イギリスのPrEPに関するドキュメンタリー映像「PrEP17 – The coming of age of PrEP」の中では、使用者からこのような声が上がっている*5。

PrEPの使用により、不安や恐怖が軽減されること、「HIV感染リスクから自分を守っている」という自己防衛の意識や行動変容は、自分自身に対する責任感の増加や精神的な安定などメンタルヘルスの視点から考えてもポジティブに働くことが予想される。

アメリカのワシントン州で行われたある研究*6では、PrEPの使用により、セックスに関連した恐怖心や羞恥心が減少し、性的な満足感や親密感が高まったことが報告されている。

PrEPの服用は、物理的なHIV感染のリスクを下げるとともに、メンタルヘルスを保つために有効な手段の一つといえるのではないだろうか。

PrEPはHIV感染リスクを下げると共にメンタルヘルスを保つ

参考資料・エビデンス

*1. 数字でわかる日本のPrEP
https://prep.ptokyo.org/result-2018/

*2. PrEPってぶっちゃけどう?費用やメリットなど、PrEP使用者に本音を聞いた
https://genxy-net.com/post_theme04/10151118ll/2/

*3. SH外来
http://shclinic.ncgm.go.jp/index.html

*4. パーソナルヘルスクリニック
https://ph-clinic.org/blog

*5. PrEP17 – The coming of age of PrEP
https://vimeo.com/214791866

*6. The Impact of HIV Pre-exposure Prophylaxis (PrEP) Use on the Sexual Health of Men Who Have Sex with Men: A Qualitative Study in Seattle, WA
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/19317611.2016.1206051?src=recsys