PrEPについてよくある13この質問と回答

2020年6月24日

PrEPについてよくある13この質問と回答

PrEPってなに?

PrEPとは

Pre-Exposure Prevention = 曝露前予防、のことです。

Pre = 事前
Exposure = 曝露(HIVウイルスとの接触)
Prevention = 予防

PrEPは、HIVにまだ感染していない人がツルバダ(Truvada)という薬を服用することでHIV感染リスクを減らす、対HIVウイルス感染の予防戦略です。

HIV陰性者がHIV陽性者と接触する前に抗HIV薬を服用するPrEPは、ゲイやバイセクシャルの男性、トランスジェンダーだけでなく、異性愛者や薬物を注射する人々全ての、セックスを通じたHIV感染リスクを大幅にに減らすことが証明されています。

PrEPではいくつかのツルバダ服用パターンがあり、用法用量を守って適切に服用すればHIVの感染リスクを92%減らすことが可能です。また、1日1錠を毎日服用するデイリーPrEPでは、最大99%の削減効果があると考えられています。

ちなみに、PrEPに他の性感染症(STD)の予防効果や、避妊効果はありません。HIVウイルス陽性者に対する治療法とも異なるものです。

PrEPとPEPの違いとは

PrEPとPEPの違い

一方、Post Exposure Preventionは曝露後予防のことです。

Post = 事後
Exposure = 曝露(HIVウイルスとの接触)
Prevention = 予防(感染を防ぐための治療)

曝露後予防(PEP)は、HIV陽性者や陽性の可能性のある者と接触した後、HIV感染リスクを減らすため、HIV陰性の個人が抗HIV薬を服用するHIV予防戦略です。

PEPは1ヶ月間の予防投薬期間が必要で、可能性のある暴露後72時間以内に開始する必要があります。

PrEPが推奨されるのはどんなひと?

PrEPは、HIV感染リスクの高い人々に推奨されています。

具体的には、コンドームを使用しない肛門性交(アナルセックス)の経験があるかた、過去6ヶ月間に性感染症(STD)と診断されたゲイまたはバイセクシャルの男性が該当します。

また、注射器の針を共有する薬物中毒者や、リスクの高いパートナーとのセックスにコンドームを使用しない異性愛者の男女も含まれます。

PrEPで承認されている薬は?

PrEPで承認されているツルバダは、エムトリシタビン(FTC)とテノホビル(TDF)という2つの薬を1つに組み合わせた合剤とよばれるものです。PrEPで予防医療に使われる以前から、すでにウイルスに苦しんでいる人々のHIV増殖を抑制する薬物療法の一つとして10年間以上使用されてきました。 

[先発薬]
ツルバダ(Truvada):アメリカ食品医薬品局(FDA)による最初のPrEP承認薬。2012年に承認済み。ギリアド・サイエンシス社が製造。

[後発薬]
テンビルEM(TENVIR-EM):FDAが暫定的に承認。インド後発製薬2番手のシプラ社が製造。日本でも個人輸入で購入可能。

リコビルEM(RICOVIR-EM):FDAが暫定的に承認。2017年7月31日にカナダ保健省も承認。後発製薬世界最大の米マイラン社が製造。

 「暫定的」なFDA承認とは、 当該の製品がアメリカでの特別なマーケティング保護を受けている場合、FDAは完全な承認ではなく「暫定的な承認(=tentatively approved)」を発行します。 暫定的な承認であっても、製品が米国での安全性、有効性、および製造品質基準を満たしていることを意味します。要するにFDA承認のこのステータスは、これらのエムトリシタビン/テノホビル合剤のジェネリックがブランド品であるツルバダと同等であり、米国内の薬局において、Truvada®と同じ棚に陳列することが許可されています。

シプラ社とマイラン社のジェネリックを服用するHIV感染者は、世界中で100万人を超えるといわれています。特にシプラ社のテンビルEMは、国境なき医師団のアフリカでの医療活動において、多くのHIV陽性者のエイズ発症を遅らせる治療に役立てられています。

[2019年に新しく承認された先発薬]
FDAは2019年10月3日、ギリアドの抗HIV薬Descovy(エムトリシタビン200㎎/テノホビル・アラフェナミド25㎎配合剤)について、PrEPへの適応を承認。*1

ツルバダ(Truvada)はどんな薬?

ツルバダ(Truvada)とは

ツルバダの機能はHIV逆転写酵素と呼ばれる酵素をブロックするものです。この酵素をブロックすることで、HIVが体内でウイルス自身をコピーし増殖する働きを防ぎます。

この機能を予防に使うことで、ツルバダはすでに感染している人のHIVを抑制するだけでなく、そもそもウイルスが人に感染するのを防ぐこともできるのです。

PrEPは何日後から効果がある?

PrEPが体内で高い予防効果を発揮するまでに、毎日1錠のツルバダ服用を少なくとも7日間継続する必要があります。

PrEPはいつでもやめられるのか?

PrEPが不要になった場合、いつでもPrEPの服用を中止できます。また、PrEP服用による合併症が発現した場合や、毎日錠剤を服用できない場合もPrEPの中止が可能です。ただし、最後の有意の曝露(HIVに感染した可能性のある行為)から1ヶ月間はPrEPを服用し続けることをお勧めします。

PrEPの有効性に関する研究

PrEPに関する研究

PrEPは、複数の研究でHIV感染リスクの低減に役立つことが示されています。

iPrEx試験では、PrEPがゲイやバイセクシュアルの男性やトランスジェンダーの女性の間のHIV感染のリスクを軽減することが示されました。*2

またiPrExにおける「男性とセックスをする男性に関する主要な研究」では、HIV陰性の男性に対してツルバダ(Truvada)日常的に使用するよう処方したところ、プラセボ(偽薬)を服用したグループの男性よりもHIVに感染する可能性が44%低いことが示されました。ただし、試験参加者の多くが薬剤を用法通りに服用しなかったか、推奨された頻度で服用できなかったため、この数値は更に改善される可能性があります。

Partners PrEPとTDF2の2つの大規模試験では、PrEPが異性愛者の男女間のHIV感染のリスクも低減することが示されました。*3

バンコクテノホビル調査では、PrEPが薬物の注射器を使い回す人々にも有効であることを示しました。 *4

PrEPは月額いくらかかる?

予防医療への保険適応が原則認められていない我が国では、PrEPは全額自己負担にて行う必要があります。ツルバダの薬価は1錠あたり3,864.6円と高額で、薬にかかる費用だけで1ヶ月あたり12万円弱かかります。これに定期的な診察費などが加わると、年間で150万円ほどに達します。

日本におけるPrEPの年間費用は中央値で1,057,191円であり、1日あたり2,896円となっています。*5

しかし、先述の通り現在はツルバダの安価なジェネリック薬が市場に出回っており、1ヶ月分を3,000~5,000円前後で購入することが可能です。日本からも個人輸入代行サイトなどから、オンラインで購入できます。

ジェネリック品を扱うCipla(シプラ)社、Mylan(マイラン)社両メーカーの製品の安全性は証明されています。

PrEPは太るって本当?

PrEPは太る?

ツルバダは、服用当初は正常な体重増加を妨げる可能性があります。ただし、この効果は長期間の使用で消えるかもしれないと考えられています。

ある研究では、ツルバダを服用している人に12週目と24週目に少量の体重減少がみられ、36週目と48週目には基準体重に戻ったと示されています。

iPrExの代謝サブスタディでは、PrEPのためにツルバダを服用しているシスジェンダー男性とトランスジェンダー女性が24週間後に体重減少を経験し、その後の来院時の体重増加はプラセボと同様でした。その後96週までに、ツルバダを服用している人々の平均体重はプラセボと差異がありませんでした。

また、HIV陰性の人が使用する場合、Descovy(日本製品名:デシコビ)は少量の体重増加を引き起こす可能性があります。PrEPに対するDescovyの研究に参加したシス男性とトランス女性は、48週間の服用後、体重が1kg増加しました。 *6

PrEPを行う間、お酒は飲めるの?

飲めます。アルコールによるツルバダへの相互作用は確認されていません。PrEPの最中も問題なく飲酒いただけます。

ツルバダ(Truvada)の副作用

PrEPとしてのツルバダの研究で見られる最も一般的な副作用には、頭痛、吐き気、嘔吐、発疹、食欲不振があります。

一部の人々には、テノホビルはクレアチニンとトランスアミナーゼという腎臓と肝臓に関連する酵素を増加させることがあります。高レベルになると、これらの臓器への損傷を示す可能性があります。

また、テノホビルは骨ミネラル密度を低下させる可能性があるため、カルシウムやビタミンDのサプリメントの併用が推奨されることがあります。

さらに、テノホビルとエムトリシタビンを服用している一部の人々では、血中の乳酸レベル(乳酸アシドーシス)が増加し、「脂肪肝」などの肝臓の問題が発生することもあります。

これまでのところ、HIVを予防するためにツルバダを服用している人々には、骨密度低下のエビデンスは見つかりませんでしたが、ウイルスを抑制するために服用している感染者のなかには、骨密度の低下が見られています。*7

ツルバダ(Truvada)についてあまり知られていないこと

PrEPの広範な普及が、他の性感染症(STD)の蔓延に寄与してしまうことを恐れている人もいます。

一部の公衆衛生家はツルバダを「政治的な薬物」と呼び、“The CEO of HIV”の異名をもつAIDSヘルスケア基金のマイケル・ウェインスタインは「PrEPは無責任な性行為を奨励する」と批判しています。どの主張もポジション・トークの要素を含みますが、多角的にPrEPを観察し、評価することは有意義です。*8

ウェインスタインや他の批評家は、ツルバダが誤った安心感を人々に与え、コンドームの使用の減少、危険な性行動、梅毒や淋病やクラミジアなどのHIV以外の性感染症の感染率の増加につながる可能性があると指摘しています。

また、毎日錠剤を服用しなければならないPrEPにおいて、人々が用法用量を確実に守って正しく薬を服用できるかどうか、恐れるひとも多くいます。PrEPでのツルバダ服用期間においても、性行為でのコンドーム着用は推奨されており、それはPrEPには他の性感染症への治療・予防効果がないことが理由です。

一方、PrEPの支持者は、ツルバダの恩恵を受ける可能性のある多くの男性は、すでに普段からコンドームを使用していないため、この薬はHIV感染を予防するための極めて実用的なツールになっていると主張しています。PrEPは、コンドームを使用しない人々に、現在欠けているセーフティーネットを提供していることも事実です。

ミクロでは、現在ツルバダの使用が北米などの一部ゲイコミュニティーメンバーによって非難されています。

PrEP先進国である北米において、ツルバダの使用にブレーキがかかるもう1つの理由に、PrEPユーザーが同性愛者コミュニティの一部で「ツルバダ娼婦」とレッテルを貼られることが挙げられます。特に、ドラッグを使用する者の多くはリスクの高い危険な性行動を選択するため、彼らにPrEPを奨励することはコンドームなしでセックスする許可を与えることと同じであると指摘されています。

2015年サンフランシスコでのHIV撲滅キャンペーン。市の保健当局が「ゼロ到達」という野心的な目標を設定している。

*1. ミクスOnline:米FDA HIV感染予防薬Descovyを承認
https://www.mixonline.jp/tabid55.html?artid=68191
ギリアド・サイエンシス社プレスリリース:
U.S. Food and Drug Administration Approves Descovy® for HIV Pre-Exposure Prophylaxis (PrEP)

*2,3,4. prepfacts.org : The Basics
https://prepfacts.org/prep/the-basics/

*5. The Japanese Society for AIDS Research : HIV 感染に対する Pre-Exposure Prophylaxis(PrEP)の 費用対効果に関する文献レビュー
https://jaids.jp/pdf/2018/20182002/20182002001005.pdf

*6.  sfaf.org : What we know about Descovy’s impact on weight & cholesterol
https://www.sfaf.org/collections/beta/what-we-know-about-descovys-impact-on-weight-cholesterol/

*7. Stanford HEALTH CARE : Pre-Exposure Prophylaxis
https://stanfordhealthcare.org/medical-conditions/sexual-and-reproductive-health/hiv-aids/treatments/prep.html

*8. The New York Times Magazine : The C.E.O. of H.I.V.
https://www.nytimes.com/2017/04/26/magazine/the-ceo-of-hiv.html
AIDS Healthcare Foundation : Michael Weinstein
https://www.aidshealth.org/tag/michael-weinstein/